投資

60歳の投資シミュレーション

過去に30歳からの投資40歳からの投資についてシミュレーションしてきましたが、今回は60歳ならどのような選択がいいのかを検討してみます。定年までに十分な時間のある方は、株式への積立投資を行った上で、積立完了後も運用はやめないで、定額で取り崩していくのが最適解でした。しかし、60歳からだと、その方の資産状況によって答えは変わってきます。

私の考えでは、退職時に手元にある資産によって対応は次のように分けられると思います。

  • 十分な貯金が無い → 長く働く。保険、電話、家賃、自家用車を見直して貯金
  • 70歳までは年金なしで行ける → 年金の繰り下げ受給をして、年金を実質26%アップ
  • 繰り下げなしでも余裕あり → 損失額許容できる金額を運用して生活の足しに
  • 100歳まで贅沢できる資産あり → 全額を国債と預金にする。もしくは余裕資金を投資。

細かく解説していきます。

十分な貯金がない方

収入を増やして、支出を減らすしかありません。収入を増やすためにできるだけ長く働きましょう。支出については、食糧費の節約は最後にして、不要な保険、携帯をMVNOに、家賃の交渉または安いところへの引っ越し、都会であれば自家用車をやめる、田舎であれば軽自動車にするなど固定費を下げることに重点におきましょう。私の感覚では、お金がないと言っている人ほど、いろいろな理由をつけて、固定費の節約をしないような気がします。例えば、携帯の格安SIMが一般的になってもすでに10年以上経ちます。私はかなり初期の段階で切り替えて何の問題もなく出費を抑えられたので、周りの人にも勧めたのですが、すぐに切り替えた人がいた反面、メールアドレスが変わるのは困る、家族割を利用している、通話し放題がないなどと色々と理由をつけた方は、今でもそのままです。毎月5000円の違いだとすると10年で5000x12x10=60万円になります。家族なら100万円以上違ってくるのではないでしょうか。私も固定電話や家賃が無駄だと知りつつ、20年も放置しているので、めんどうな気持は良くわかります。でも、どこから時間を取って切り替えない限り、ずっとお金をドブに捨て続けることになります。その損失はスーパーで安いものを見つけて買うと言う程度では埋め合わせることはできません。

70歳までは年金なしで行ける方

資産額としては1500万円から2000万円と言うところでしょうか。65歳まで働いて、その後は蓄えを取り崩して70歳まで生活できるのであれば、年金の繰り下げ受給をすることにより、受給額を手取りで26%増やすことができます。例えば65歳で211万円の受け取れる方は、70歳まで繰り下げれば300万円になりますが、税金が増えるので毎月の手取りは4.7万円増にとどまります。受け取る年金の範囲で暮らしていくことができれば、これで一生お金に困ることはなくなります。この増額は死ぬまで続きますから長生きリスクに対しては最も有効な対応といえます。年金の繰り下げは1ヵ月単位でできますので、ここまでの蓄えがない方もできるだけ働いて収入を得ることにより、繰り下げの期間を長くした方が良いと思います。この選択の弱点は手元の資産が減ってしまうこと、元気なうちにお金を使えないことです。体が満足に動かなくなってから余分なお金をもらっても仕方ないという意見はごもっともです。65歳から70歳の間に貯金がどんどん減っていくのも辛そうです。また、年金制度が信じられないので、貰えるものは早めにもらっておきたいという人も多いようです。そういったこともあり、現状繰り下げ受給をしている人の割合は、1.5%しかいないそうです。それに対し繰り上げ受給している人のの割合は30%もありますが、これは損得を考えて選択したわけではなく、年金を早く貰わないと暮らせない人が多いためでしょう。

繰り下げ受給しなくても余裕のある方

手元の資産を30年にわたって取り崩すことで生活できる人です。資産額としては2000万から3000万円くらいでしょうか。このうちの一部をインデックス投資に回します。問題はその割合です。よく言われるのは、100-年齢をリスクのあるところに投資するというものです。例えば60歳なら40%、70歳なら30%を投資に回します。ただ、一律に割合で決める方法だとリスク資産が暴落した場合、予想外にその金額が多くなって、日々の生活に支障が出てしまう可能性があります。経済評論家の山崎元さんは、毎月いくらお金が減っても暮らせるかを基準にするのがよいと言っています。例えば、毎月2万円の収入減が許容できる方は、30年生きるとすれば2x12x30 = 720万円の損失に耐えられることになります。株式の暴落率は、だいたい30%程度ですから、720×3=2160万円までは投資して良いという考え方です。リーマンショックの時は50%下がりましたので、不安な方は倍率を2にして、720×2 = 1440万円としてもよいと思います。

例えば3000万円の資産がある方が、

  • 1200万円を普通預金と個人向け変動金利10年国債
  • 1800万円を全世界株式インデックス

という資産配分を取れば、毎月平均としては手取りで1800*0.05/12*0.8 =6万円を受け取れますが、この額は4.2万円まで下がる可能性もあります。この方法では自分が死んだときには元本の3000万円は減らないどころか増えている確率のほうが高いです。ただ、60歳までまったく投資をやってこなかった方の場合、暴落が起きたら精神的に耐えきれずに売却して損を確定してしまう可能性が極めて高いと思います。何十年も働いて貯めたお金が、毎週100万、200万と減っていくのを眺めている自分を想像してみてください。想像するだけも辛いですが、実際に起きるとその何倍ものダメージを受けるし、家族からも責められます。これは遺伝子に組み込まれた恐怖なので、訓練しないと乗り越えることはできません。年金の繰り下げは、リスクがゼロで毎月4.7万円プラスになるのに対して、このシミュレーションではリスクを取っているのに、リターンの期待値は6万円とその差は大きくありません。もちろん後者の方が統計的には明らかに有利な上に元本も減らないのですが、仮にそのお金を使わないとすれば、余計なリスクを取っているだけとも言えます。このため資産運用全くしたことのない人は年金の繰り下げ受給を選択した方がいいかもしれません。また仮にあなたが今60歳だとすれば、仕事を辞める65歳まで5年間ありますので、今からでもインデックス積み立て投資をして経験を積んでおくのが良いと思います。5年あればある程度の経験ができ暴落への耐性もつけることができるかもしれません。投資と繰り下げ受給についてはするかしないかではなく、連続的なものですから、自分に合った割合を見つけていくしかないでしょう。ただそれはとても難しく知的な負荷も高いので、多くの人はデフォルトの65歳受給を選ぶことになるでしょう。そして投資は、ここに書いた方法で運用金額を再検討して続けるのが良いでしょう。

100歳まで贅沢できる資産あり

100歳まで自分のしたいことをすべてできるだけの資産を持っている方は、投資のリスクを取る必要はまったくありませんので、理屈上は資産の全額を預金と個人向け変動金利10年国債にするのが良いということになります。ただ、お金は多くても困るものではないし、自分が使わないなら、困っているところに寄付するという方法もありますので、余裕資金は投資するのが良いのではないでしょうか。仮に5000万円を5%で運用すれば、30年後には2.16億円になる計算です。とはいっても、30年後では助けられる人も助けられませんから、寄付をするなら毎年定額で行ったほうが良いでしょう。